Organization-as-Platform Activism: Theory and Evidence from the National Football League “Take a Knee” Movement, Alexandra Rheinhardt, Forrest Briscoe, and Aparna Joshi, Administrative Science Quarterly, 2023, 68(2), 395-428

National Football League (NFL) での ‘‘Take a Knee’’ Movement を「組織をプラットフォームとするアクティビズム(Organization-as-Platform Activism)」と捉え、その規定要因を定量的に検討した論文です。


概要

‘‘Take a Knee’’ Movement とは、NFLの選手たちが、Black Lives Matter(BLM)運動とも連帯しながら始めた抗議運動で、当時49ersのQB Colin Kaepernickが試合前の国歌斉唱時に片膝をつくことで抗議の意を表したことから、こう呼ばれています。

https://en.wikipedia.org/wiki/U.S._national_anthem_kneeling_protests

ここで「組織をプラットフォームとするアクティビズム」は、以下に示す2つのアクティビズムとは異なる、第3の形態として位置づけられています。

  1. 市民アクティビズム(Citizen Activism)
  2. 組織変革アクティビズム(Organizational-Change Activism)
  3. 組織をプラットフォームとするアクティビズム (Organization-as-Platform Activism)

1. は組織の外で行われる、いわゆる一般的な運動で、street protest や letter-writing campaigns が典型です。2. は、組織の従業員が、自らが働く組織の変革を求めて行うもので、workplace voicing / framing / lobbying などが当てはまります。

これに対し3. は、2. と同じく組織の従業員が行うものですが、その目的は組織の変革ではなく、1. と同じく社会的な問題への抗議です。あくまで組織は運動の(物理的・象徴的な)「プラットフォーム」であり、その宛先は組織外にいるステークホルダーであるという点で、1. と 2. の中間に位置する運動形態と言えます。

著者らが取り上げた ‘‘Take a Knee’’ Movement も、NFLの選手たちが、自チームの試合をプラットフォームとして、ローカルコミュニティやファンベースなど、外部のステークホルダーに訴えたアクティビズムとして、3. に位置づけることができます。

そして、著者らは、3. Organizaion-as-Platform Activism の発生を予測する要因として、次の3つを指摘します。

  • (a) 利用可能性:自らの組織が、ある社会問題のプラットフォームとしてどの程度利用できるか?
  • (b) 可視性:そのプラットフォームが最も注目を集めるのはいつか?
  • (c) 受容性:外部のステークホルダーはどの程度メッセージを受け入れてくれるか?

そして、(a)を選手間のサラリーの平等度や黒人選手比率、(b)をその試合が全国放送されているか/ホームゲームか、(c)を各チームのファンベースとローカルコミュニティに占めるリベラル人口の割合で操作化し、2016, 2017シーズンを対象に検証しています。分析単位は選手―週(player-week)で、ある選手がある週に行われた試合で抗議運動を行うと1、それ以外は0をとるアウトカムに対して、ランダム効果モデルで推定しています。

分析の結果、上記の予測因子の効果は概ね確認され、とくに黒人選手比率やステークホルダーのリベラリズムとの関連が強いことが示されていました。


読んだ感想

●当時NFLを観ていたこともあり、ASQを眺めていてこの論文を見つけたときは驚きました。組織と社会運動に関する理論的な関心が先だったのか、それとも‘‘Take a Knee’’ Movement それ自体への関心が先だったのか、気になるところです(読後の印象は後者です)。

●NFLのチームを organization、選手を employee と位置づける妥当性と、「なぜNFLのチームを組織研究として取り上げるのか」がポイントかなと思いながら読んでいました。
 この点は、方法セクションで、①データの豊富さ(通常の組織では観察できない情報が公開されている)、②組織としての構造的類似性の高さ(これにより組織レベルの要因をうまく条件づけられる)の2点から説明されていました。
 なるほどと思いつつ、この知見を民間企業などに応用する際の一般化可能性については、もう少し積極的な議論があってもよかったと思いました。

●同じ著者グループによる関連研究がOrganization Scienceにも掲載されており、こちらでは抗議運動がその選手のキャリアに与える影響が検討されているようです。

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